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牛上隆司のLET’S吹奏楽
〈ベッソン〉ブランド公式ウェブサイト日本版特別企画として、2022年4月より、バンド指導者として全国的に活躍されているユーフォニアム奏者、牛上隆司氏による連載「Let’s 吹奏楽」を、全12回の予定でお届けしています。
Vol.1 「セレナータ」ヤン・ヴァンデルロースト初のユーフォニアム独奏曲をお披露目!、はこちら。
Vol.2 コンサートを成功させるには、はこちら。
Vol.3 演奏のクオリティを上げるための9つのポイント、はこちら。
Vol.4 ホール練習!
皆さんこんにちは。いよいよ7月となり、本格的にコンクールのシーズンですね。
コンクールが近付いて来ると、実際のコンクール会場でホール練習をするバンドも多い事と思います。
6月に指導を行った中にも、コンクール会場でレッスンを行った学校がいくつかありました。
ホール練習はホールまで移動しなければなりませんし、楽器運搬など色々な労力や費用も掛かります。
それでは、なぜそう言った費用や労力を掛けてまで実施するのでしょうか?
思い付く理由をあげてみましょう。
まずコンクール本番で練習する事で、会場に慣れる事が出来る。響きに慣れるとか、他のパートの聴こえ方に慣れる。メンタルな面で慣れる事で、本番の緊張を和らげる。
移動に時間が掛かる物の、練習が始まれば普段より長く練習出来る。何時まで出来るかは、学校により異なると思いますが、最長21時まで練習、22時までに撤収が一般的でしょうか。沢山練習出来るからする。
もう一つは、これが最も重要な理由ですが、実際の会場で演奏する事で、どのように聴こえているか知る。これはプロの指揮者の方でもする事がありますが、演奏が客席ではどのように聴こえているか聴いてみる事は、大変重要です。リハーサル中に、指揮者が客席まで降りて行き聴こえ方やバランスを見る事は、実際のプロのコンサートのリハーサルでも時々あります。
コンクールのためのホール練習でも、審査員席にはどのように聴こえているのか、響いているのか、指揮者自身が聴きに行ったり、音楽的に信頼出来る人に頼んで聴いて貰う事は、とても大切です。特に楽器の特性に合わせて、それぞれの演奏する位置を決めてあげる事がとても重要です。
【事例1】 最初のセッティング
色々動かしています
最終的なセッティング
例えば、雛壇一番上のトランペット・トロンボーンが、出来るだけ前に出て演奏しているケースをよく目にしますが、必ずしも前に出れば良く聴こえるとは限らないのです。前に出れば、楽器から出る直接音はより良く届くはずですが、反響板に反響して聴こえて来る間接音は、弱くなる事が多いです。こればかりはホールによって異なりますから、実際の使用ホールで試してみないと分かりません。僕が実際にセッティングを決める際には、雛壇の前寄り・後寄り・真ん中辺りの3通り試して決めるようにしています。
2段目に乗る、ホルン・ユーフォニアム(違う楽器の事もありますが)も同じように試してみます。ホルンは、反響板との距離や角度でかなり違いがありますので、上手寄り・下手寄りも試してみます。(1メートル前後まで左右を動かして試すと良いでしょう)ユーフォニアムやテューバなどベルが上向きの楽器は、上の反響板の状況を確認して位置だけで無く向きも工夫すると良いです。
テューバ・コントラバスは、上手側の反響板との距離で結構変わるので、何通りか試すと良いです。
次にスネアドラムやバスドラムの位置を決めます。バスドラムがあまりに下手側に離れてしまうと、アンサンブルに問題が生じる事が多いです。スネアドラムは、ホルンと近いとやりやすいケースが多いです。
シンバルは、バスドラム・スネアドラムに近い方が良い事が多いです。
グロッケン・トライアングルなどの鳴り物(金属的な音の高い物)は、あまり客席に近いと、そればかり聴こえてバランスが悪くなりがちです。また、グロッケンとフルートが近いとやりやすいケースが多いです。
ドラが下手寄りの反響板に近過ぎると、音が大きくなり過ぎる恐れがあります。(実際の曲を演奏してバランスを取ります)
木管低音は、テューバ・コントラバスの近くに置く事が多いですが、ホールによっては、ユーフォニアムのすぐ下あたりが良く響くケースもあります。両方試してみましょう。
オーボエは、一番前の列で横向きに置く事が多いですが、ホルン・ユーフォニアムの前辺りから正面向きに鳴らすのも良く響きます。
フルートも一番前の事が多いですが、2列目ホルンと打楽器の前辺りから正面向きが良く響きます。
サクソフォンは、2列目にアルト・テナーと並ぶ事が多いですが、1列目と2列目でカルテットを組むような配置も考えられます。
クラリネットは、一番前の列にぐるっと並ぶケースと1列目と2列目にパートを分けて並べるケースもあります。
【事例2】 最初のセッティング(石川県立金沢二水高等学校)
かなり動かしました
テューバのアンサンブルが難しそうだったため、トロンボーンに近づける事に
また、最後にマーチのレッスンをしたところ、バスドラムやスネアドラムが遠過ぎてアンサンブルが難しそうだったため、写真より上手寄りに近づけました。(写真は撮りそびれたようです)
人数のバランスや楽器編成、奏者の習熟度によっても色々な可能性が考えられるので、一概には言えないのですが、色々試して聴いてみて決めるべきです。言い辛い事ですが、良く響いて大きく聴こえるのは良い物の、ノイズが混じったり覚束ない演奏がホールに響き渡っても、何と言うか、その〜ゴニョゴニョ…。色々なケースがあるのです。
実際、一つひとつ楽器の位置を決めて行くと意外と時間が掛かる物です。ある程度環境に慣れてリハーサルを進め、伸び伸び鳴らせるようになってからセッティングした方が良いかも知れません。時間や予算が取れずに、ホール練習が出来ない場合は、ホール練習をするバンドのリハーサルを見学させて貰うだけでも参考になる事が多いでしょう。
折角頑張って練習したのですから、その甲斐があって狙った通り、効果的に届けられるように上手くセッティングして本番の演奏に活かしましょう。コンクールは役員や係がいて、準備を手伝ってくれます。置かれたイスにそのまま座って演奏すれば、ホール練習で決めた位置や角度と違うかも知れません。ホール練習の際に位置や角度を覚えておいて本番のステージで再現しましょう。
本番の演奏が成功しますように!Let’s 吹奏楽
※ 牛上隆司氏への指導および出演依頼は、最寄りの〈ベッソン〉公認特約店、またはビュッフェ・クランポン・ジャパン ショールームへご用命ください。
※ 牛上隆司氏の経歴と現在の活動はプロフィール、およびインタビュー記事でご確認いただけます。
※ 牛上隆司氏に関する最新情報はFacebookでご覧ください。
牛上隆司のLet’s 吹奏楽
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