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牛上隆司のLET’S吹奏楽

〈ベッソン〉ブランド公式ウェブサイト日本版特別企画として、2022年4月より、バンド指導者として全国的に活躍されているユーフォニアム奏者、牛上隆司氏による連載「Let’s 吹奏楽」を、全12回の予定でお届けしています。
 
Vol.1 「セレナータ」ヤン・ヴァンデルロースト初のユーフォニアム独奏曲をお披露目!、はこちら
Vol.2 コンサートを成功させるには、はこちら
Vol.3 演奏のクオリティを上げるための9つのポイント、はこちら
Vol.4 ホール練習!、はこちら
 

Vol.5 イメージ通りの演奏にするために

 
 皆さんこんにちは。8月となり既にコンクールが終わったバンド、めでたく次のラウンドに進出したバンド、これから最初の大会と、それぞれ地域によって事情は様々だと思います。
 
 僕も大編成からアンサンブル・コンテストに出演出来るくらいの小編成まで、色々なバンドを指導して来ました。最近は、少子化の影響から段々と大編成のバンドが減り、小編成化していっています。なかには1~2名という少人数のバンドもあるようです。(稀に全校生徒数の増加により大編成になるバンドもあります。)そんな中、1人でも2人でもコンクールに参加する本人達の気概や熱意に感心しますし、それを実現させる周囲で関わっている人達の努力に頭の下がる思いです。(一般の部でも1人で大編成に出演したケースをネットで見かけました。一般の部の場合は、自分で呼び掛けてバンドを作るなり、既成のバンドに参加するなど方法は色々あると思います。趣味で楽器を演奏している人が沢山、1名とか、2名のバンドでエントリーすると収拾が付かなくなりますから、これはちょっと違うかなと思います。たまたま部員の少ない吹奏楽部に入部した中高生に限る話だと思います。)
 
 現在、特に学校の部活動に関しては、部活動の地域移行という大きなトピックが多方面で話題に登っています。ちょっと考えれば大きな問題が起こる事が予見出来るような事柄が、何も手当てされないまま強引に地域移行だけを実現しようとしているように思えてなりません。これでは、問題が多発した時に誰が責任を取るのでしょうか?この件に関しては、また近いうちに僕なりの意見を述べて行きたいと思います。
 
 前置きが長くなりましたが、本題です。
 
合奏指導していて感じる事
 
 〈Vol.3 演奏のクオリティを上げるための9つのポイント〉 で述べたような、スタイルに合った演奏や音形を揃えたりするのになかなか思うように行かない事があります。そういう時に、自分で演奏して示したり、歌って示す、または上手な生徒を見本にしたりして、一人ひとり真似をして吹いて貰うのですが、なかなか皆んなが上手く真似て吹ける事はありません。(メンバー全員が上手く真似て吹けるようなバンドは、かなり水準の高いバンドと言えるでしょう。)そもそも楽譜に書かれたアーティキュレーションを守って演奏する事やスタイルその物を理解出来ていないケースが多く感じます。ですので、都合の良いように吹き易いように、悪く言えば好き勝手に吹いていて、セクションで揃えるとか、そう言った意識も無く隣の人と違っていても好き放題に吹いている状態です。
 
 アーティキュレーションやスタイルというのは、経験の集積ですから、こういう作品はこのように演奏する、などの常識として確立して行く物なので、経験の浅いプレイヤーにとっては酷な物で、沢山聴いたり教わったりしなければ分かりません。
 
自分達の演奏する作品のスタイルを理解する
 
 こう言った問題を解決して行くためには、まず、自分達の演奏する作品のスタイルを理解する必要があり、以下のような対策が考えられます。
① 楽譜に書かれたアーティキュレーションを守って演奏する
② 同様のスタイルの作品を色々と聴いてみる
③ そのスタイルを得意とするプレイヤーの手解きを受ける。特にその世界に身を置くプロのプレイヤーの方たちは、スタイルに合致しているか否か明確に区別し説明出来ると思います。
 
 ③においては、私が学校で指導する際には、まず手本を示し、生徒に真似をしてもらうことを行いますが、先に述べた通り、メンバー全員が上手く真似て吹けることは稀です。なぜなら、例え作品のスタイルを頭で理解しても、そもそも奏法の基礎が出来ていないために、思い通りの演奏が出来ない状態だからです。
 
 例えば金管楽器ではリップスラーが難しいために、スラーが書いてあってもタンギングをする。そうするとスラーにはなりません。例えば、クラリネットでは記譜のラやシ♭の音が出にくいため並んでいる他のソやドの音と比べて極端に鳴りが悪く、凸凹した演奏になる。
 
 そんな事が同じバンドの演奏の中のあちらこちらで起き、急に鳴ったり鳴らなかったり、音形も真っ直ぐ吹く人、抜く人、後押しする人(実際に後押ししている訳では無く、後から鳴り出すため押しているように聴こえる。または、発音の後に顎が動きトゥオーとかトゥウォーという風に聴こえる)などがそれぞれ好き好きに演奏し、カオスな状況で演奏が続いている。こんな状況で演奏しているバンドが沢山あります。
 
 これを解決するためには、奏法の基礎を身に付けなければなりません。
 
基礎を身につけよう!
 
 奏法の基礎に関しては、楽器それぞれの特性に合わせた基礎練習を繰り返し行う事で、次第に自然なニュアンスで吹けるようになって行きます。各調のスケールやインターバル練習、タンギング特に発音タンギングは、全ての管楽器に重要です。
 
拙著:999秒の実践的で効果的なエクササイズ(風の音ミュージックパブリッシング)
 金管楽器のウォーミングアップやインターバル、リップスラー、タンギングなどを纏めたエチュード(トランペット・ホルン・トロンボーン・ユーフォニアム・テューバ各版)。現在この金管楽器用エチュードを利用して木管楽器・コントラバス・打楽器を加えた「999秒の実践的で効果的なエクササイズ合奏版」の出版も準備中です。
 

 もちろん、以前から出版されている各楽器用のエチュードや合奏用エチュードにも素晴らしい物が沢山あり、お勧めです。
 
吹奏楽教則本 3D バンド・ブック(ヤマハミュージックメディア)
 
吹奏楽基礎合奏 スーパー・サウンド・トレーニング(ウィンズスコア)
 
 金管楽器では、リップスラーの難しさからタンギングをしてしまい、結果アーティキュレーションが変わってしまうので、リップスラーを沢山練習しましょう。また、前述のように例えばクラリネットで出にくい音は、ホール(孔)をあけるフィンガリングの事が多いので、音を変えずにホールを塞げるフィンガリングに替える(所謂替え指)事で音が纏まりやすくなります。
 
 こう言った事も、やはりプロのプレイヤーのレッスンを出来れば定期的に受ける事が個人の演奏レヴェルを上げるのに最も効果が上がると思います。
 
 ただ、レッスンも惰性になると効果が上がりにくくなります。レッスンを依頼する際には、積極的に疑問点や苦手な部分を先生に伝えて、沢山の事柄を吸収出来るように準備しましょう。このように様々な基礎練習を繰り返したり専門家に習う事で、幅広い表現力を身につけ、思い描く通りの演奏をする事が出来るようになり、聴衆の心を震わせるような演奏が出来るようになれば、合奏をより楽しく充実した物とする事が出来るでしょう。
 
 吹奏楽コンクールが、これから本格的に始まる皆さんも、既に結果の出ている皆さんも、今後の演奏が心の底から訴えるような素晴らしい物となるよう願っております。
 
Let’s 吹奏楽!

牛上隆司

 
※ 牛上隆司氏への指導および出演依頼は、最寄りの〈ベッソン〉公認特約店、またはビュッフェ・クランポン・ジャパン ショールームへご用命ください。
※ 牛上隆司氏の経歴と現在の活動はプロフィール、およびインタビュー記事でご確認いただけます。
※ 牛上隆司氏に関する最新情報はFacebookでご覧ください。
 
 
牛上隆司のLet’s 吹奏楽
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